
早見和真著『ザ・ロイヤルファミリー』を読ませていただいた感想および読書記録です。
競馬というダイナミックな舞台を通して、血と絆が織りなす圧巻の人間ドラマを壮大なスケールで描き切った傑作だと思います。オーディブル聴き放題対象作品、Kindle Unlimited対象作品(2025年11月7日現在)です。
登録は4ステップですが、失敗すると無料にならなかったり登録できません!失敗したくない方はこちら。
作品情報と読書記録
著者:早見和真さん
早見和真さんは、1977年(昭和52年)に神奈川県で生まれました。
2008年(平成20年)、ご自身の高校時代の経験を基にした小説『ひゃくはち』で作家デビューされました。同作は後に映画化、コミック化もされています。2015年(平成27年)に第68回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞されました。2019年刊行した『ザ・ロイヤルファミリー』で、2020年(令和2年)に第33回山本周五郎賞とJRA賞馬事文化賞をダブル受賞されています。
他の著書に『店長がバカすぎて』『笑うマトリョーシカ』『95(キュウゴー)』『ぼくたちの家族』『小説王』『あの夏の正解』『かなしきデブ猫ちゃん』シリーズ(絵本作家かのうかりん氏との共著)などがあります。
オーディブルでは、『店長がバカすぎて』『ザ・ロイヤルファミリー』『アルプス席の母』『95』『小説王』など12作品が聴き放題対象作品として配信されています。
作品情報
映像化
『ザ・ロイヤルファミリー』は、TBS日曜劇場にて、妻夫木聡、佐藤浩市、目黒蓮、松本若菜、小泉孝太郎ら豪華キャストで絶賛放映中です。
単行本、文庫本
『小説新潮』(新潮社)にて2017年1月号から2018年9月号まで連載、2019年10月30日に同社から単行本が刊行。2022年11月28日に文庫化。
電子書籍
2022年11月28日に電子書籍発売。Kindleほか各種電子書籍配信サイトにて購入できます。
2025年11月7日現在、Kindle Unlimited対象作品のため、Kindle Unlimited加入者は無料で読むことができます。
現在 Kindle unlimited は 30日間無料キャンペーン を開催中です。
オーディオブック
2022年8月12日からオーディブルで配信されています。また、audiobook.jpでも2025年10月28日から配信中されています。
| 配信サイト | オーディブル/audiobook.jp |
| 著者 | 早見和真 |
| ナレーター | 中村友紀 |
| 再生時間 | 16時間39分 |
| 配信日 | 2022/08/12 |
| 制作 | 新潮社/ピコハウス |
はじめての audiobook.jp なら「聴く読む」読者特典で 30日間の無料体験 を利用できます!特典は こちら から。
読書記録
わたしは2024年11月にオーディブルの聴き放題で初めて聴きました。
『ザ・ロイヤルファミリー』のあらすじ
主人公は、父を亡くし人生の目標を見失っていた元税理士の栗須栄治(くりすえいじ)。彼は、人材派遣会社のワンマン社長で、G1制覇の夢を持つ山王耕造(さんのうこうぞう)に秘書として拾われ、未経験の競馬の世界へ飛び込みます。
耕造の所有馬「ロイヤルホープ」の活躍を通じ、栗須は競馬界の熱狂と、馬に関わる人々の情熱に触れていきます。
競馬の知識がなくても楽しめる、家族・仕事・夢といった普遍的なテーマが詰まった感動の長編小説です。ぜひ、彼らの夢の結末を見届けてください。
- 栗須栄治(くりすえいじ):物語の語り手。山王耕造の秘書となり、彼の夢と家族の絆を見守る。
- 山王耕造(さんのうこうぞう):人材派遣会社社長でワンマンな馬主。G1制覇という夢を持つ。
- 山王京子(さんのうきょうこ):耕造の妻。競馬にのめり込む夫と対立する。
- 山王優太郎(さんのうゆうたろう):耕造の息子。父の競馬事業に反発する。
- 山王百合子(さんのうゆりこ):山王耕造の長女。佐木隆二郎と密かに交際している。
- 野崎加奈子(のざきかなこ):栗須の大学時代の元カノ。バツイチで、実家の野崎ファームを手伝っている。
- 野崎剛史(のざきたけし):加奈子の父。野崎ファームの牧場主。
- 野崎翔平(のざきしょうへい):加奈子の息子。
- 広中博(ひろなかひろし):美浦トレーニングセンターの調教師。
- 佐木隆二郎(さきりゅうじろう):若く才能あるジョッキー(騎手)。
- 平良恒明(たいらつねあき):東日スポーツの新聞記者。山王耕造の動向を追う。
- 椎名善弘(しいなよしひろ):大手人材派遣会社のCEOであり、「最強の馬主」と呼ばれる。山王耕造の最大のライバル。
- 椎名展之(しいなのぶゆき):椎名善弘の息子。
- 中条美紀子(なかじょうみきこ):元ホステス。
- 中条耕一(なかじょうこういち):美紀子の息子。
『ザ・ロイヤルファミリー』の感想
正直なところ、私は競馬の知識がほとんどありません。しかし、この作品は、競馬の専門知識がなくても全く問題なく楽しめました。なぜなら、この小説のテーマは「家族」と「継承」だからです。
一代で財を築き、G1制覇という途方もない夢を追うオーナー・山王耕造。彼に拾われ、裏方として夢を支える秘書・栗須。そして、競馬によって引き裂かれ、また繋がれていく山王家のメンバーたち。
そして「ロイヤル」の名を冠する馬たちが走るのは、単なる芝のコースではなく、夢を背負った人々の人生そのものだと感じました。
「血縁」の呪縛と「絆」の輝き
物語の最大の魅力は、山王家を巡る愛憎劇です。
ワンマンで粗野に見える耕造ですが、彼の強烈な情熱の裏には、どこか不器用な優しさが見え隠れします。そんな彼が築いた「ロイヤル」という名の王国は、家族をバラバラにしました。
そして山王家の人々に翻弄される栗須栄治。
しかし、物語が進むにつれて、血縁や肩書といった縛りから解放された場所で、調教師、騎手、牧場、そして栗須といった「絆」によって結ばれた新しいロイヤルファミリーが生まれていく過程が本当に感動的でした。特に第二部で、その「継承」の形が見えてくる瞬間は鳥肌ものです!
山王社長と秘書栗須の絆
この物語にはいろいろな絆が出てきますが、物語の最初から最後まで貫かれるのが山王社長と秘書栗須との絆です。
「お前は、絶対に俺を裏切るな。」
これは山王耕造が栗須栄治を秘書に雇う際に告げた、彼の孤独と信頼への渇望を示す言葉です。この二人の絆を象徴する言葉でもあります。
ここには山王耕造という人物の孤独と、彼が抱える深い不信感が表れています。成り上がりの彼が、どれほど「絆」や「忠誠心」といったものを求めていたか、物語の始まりを象徴する重いセリフです。
栗須が人生のどん底にいる瞬間に投げかけられた契約であると同時に、それは「救いの手」でもありました。栗須は優秀な税理士でしたが、父の急死によって人生の目標と居場所を失っていました。心にぽっかりと穴が開き、虚無感を抱えていた時期です。耕造は、そんな虚ろな状態の栗須に対して、「お前が必要だ」「裏切るな」と、有無を言わせぬ形で強烈な期待と要求を突きつけました。栗須にとっては、この一方的な命令が、失われた「居場所」と「役割」を与えてくれる救いの言葉として響きました。耕造の人生哲学が凝縮された「絶対に」という言葉は、栗須の人生に再び強烈な指針を与え、彼を立ち直らせるきっかけとなったのだと思います。
「あの馬の物語に私たちはなくていいの。耕一さんとクリスさんの物語よ。」
これは物語終盤、京子が語るセリフです。
山王家が血縁の呪縛から解放され、夢が「絆」として受け継がれたことを示している言葉です。山王耕造を受け継ぐ耕一、そして山王家とは血縁関係のない栗須、この二人の「絆」を、山王家を離れた人が祝福する、なんとも感動的なシーンでした。
やはりこの物語は「山王社長と栗須の絆」の物語なのだと思います。
読み終えた後に訪れる感動の「余韻」
この小説は、読者をグイグイ引き込む構成の巧みさも素晴らしいです。
主人公たちが挑む重要なレースの行方がすぐには明かされず、読者は「どうなったんだろう?」と焦らされ続けます。そして、すべての物語が収束した最後に、読者に提示されるある記録によって、すべてのパズルのピースがカチッとはまる感覚があります。この仕掛けのおかげで、読後には単なる「よかった」という感情だけでなく、深い余韻と感動が残りました。
まとめ
競馬というダイナミックな舞台を通して、血と絆が織りなす圧巻の人間ドラマを壮大なスケールで描き切った傑作だと思います。
に、心からおすすめします!ぜひ、あなた自身の目で「ロイヤルファミリー」の物語を見届けてください。
オーディブル聴き放題対象作品、Kindle Unlimited対象作品(2025年11月7日現在)です。
現在 Kindle unlimited は 30日間無料キャンペーン を開催中です。



コメント