津村記久子さんの著書「水車小屋のネネ」をAudible(オーディブル)で聴く読書した感想です。「水車小屋のネネ」は2024年本屋大賞第2位の作品です。
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なぜ「水車小屋のネネ」をAudibleで聴いたのか?
「水車小屋のネネ」本の情報
「水車小屋のネネ」は毎日新聞夕刊に2021年7月1日~2022年7月8日に連載された新聞小説です。著者あとがきには「自分がこれまで書いた小説の中で、もっとも長い作品」とあるように、単行本で485ページになる長編小説です。
津村記久子著「水車小屋のネネ」の受賞歴は以下の通り。
書籍の情報
単行本、電子書籍の情報です。
作品 | 水車小屋のネネ |
著者 | 津村記久子 |
出版社 | 毎日新聞出版 |
発売日 | 2023/3/2 |
オーディオブック情報
聴き放題対象 | ◯ |
配信日 | 2024/5/18 |
再生時間 | 16時間1分 |
ナレーター | 神崎寿美代 |
単品購入価格 | 4,000円(会員は2,800円) |
「水車小屋のネネ」はAudibleの聴き放題対象です。初めての方なら無料で聴くことができます。
再生時間は約16時間1分です。1日2時間程度聴く方の場合、8日くらいで聴くことができます。結構ボリュームがあります。
ナレーションはフリーアナウンサーの「神崎寿美代」さんです。
初めてのAudibleなら「水車小屋のネネ」を含め2024本屋大賞作品が8作品もAudibleの聴き放題対象です。(「成瀬は天下を取りに行く」「水車小屋のネネ」「スピノザの診察室」「レーエンデ国物語」「黄色い家」「リカバリー・カバヒコ」「放課後ミステリクラブ 1 金魚の泳ぐプール事件」
「水車小屋のネネ」のあらすじ
二人の姉妹と、水車小屋で出会ったしゃべる鳥ネネの優しさに溢れた物語です。
「水車小屋のネネ」は10年ごとに時代が進む1~4話+エピローグで構成されています。
話数 | 時代 | 理佐(姉) | 律(妹) | ネネ |
---|---|---|---|---|
第一話 | 1981年 | 18歳 | 8歳 | 10歳 |
第二話 | 1991年 | 28歳 | 18歳 | 20歳 |
第三話 | 2001年 | 38歳 | 28歳 | 30歳 |
第四話 | 2011年 | 48歳 | 38歳 | 40歳 |
エピローグ | 2021年 | 58歳 | 48歳 | 50歳 |
高校を卒業し短大に進学することになっていた理佐(りさ)は、母親の恋人が大学の入学金を使ってしまい、8歳の妹である律(りつ)を虐待していることを知る。
母親の好きな男に妹が攻撃される生活が自然だとは思わなかった理佐は妹を連れて家を出て、「鳥の世話じゃっかん」と付記されたそば屋の仕事を見つける。こうして二人だけで独立することになった。
そば粉を挽く水車小屋、小屋に住むしゃべる鳥ネネ、その町で出会ったたくさんの人たちにときに心配され、ときに温かく見守られ、ふたりの姉妹とネネはときを重ねていく。
「水車小屋のネネ」の感想
しゃべる鳥ネネとは?
母親とその恋人に自分の進学のお金を使われてしまい、妹が虐待されていることを知った理佐は、家を出ることを決意し仕事を探します。「鳥の世話じゃっかん」と付記された不思議な求人を紹介され、特急電車に乗りある町のそば屋で働くことになります。そこで出会うのがしゃべる鳥ネネです。
初っ端からちょっと重たい話かなと思いつつ聴きすすめましたが、そんな中でネネが姉妹を笑顔にしてくれます。(あっ、決して重たい暗い話ではありません!)
ネネはインコの仲間のヨウムという種類の鳥です。ヨウムを有名にしたのはアレックスという実際にいた鳥です。「アレックスは50の物体、7つの色、5つの形を認識し、数を6つまで数えることが可能で、2歳児の感情と5歳児の知性を持っていた」と言われる天才ヨウムです。オウム返しという言葉がありますが、アレックスはただのオウム返しではなく、人と会話ができる鳥として有名になりました。興味のある方は「アレックスと私」(早川書房)を読んでみてください。ちなみにAudibleでも聴けます。
ネネはアレックスと同じように人と会話ができるのです。そして頭がいいだけでなく、もうとにかく愛らしくて癒やされます。
ネネは癒やしであり、「姉妹の幸せの象徴」でもあるのだと思います。
10歳離れた姉妹
姉妹が素敵です。第1話は姉の理佐(18歳)視点で物語が進みます。妹の律はまだ8歳です。1話だけで全体の2/5くらいのボリュームがあります。2話以降は成長した律の視点がメインになっていきます。
姉はおおらかで頑張りや勇気があり、妹は健気で賢くて、姉同様勇気があります。この二人の関係がとても素敵です。
姉が自分を虐待されている家から連れ出して、二人で生きていく道をみつけてくれたことを、成長してからこのように振り返ります。
「まあ私はいろんな人によくしてもらったから。あとやっぱり姉がなんていうか、無謀っていうか勇気のある人だったんで」
(「水車小屋のネネ」第三話)
これが律の原点のような思いになります。二人は決して二人だけで生きていくわけではありません。ネネや周りの人たちに助けられ、助け合いながら、ときを重ねていきます。それはとても幸せなことだと自然に思えます。
誰かに親切にしなきゃ、人生は長くて退屈
この物語を象徴するような言葉です。
「誰かに親切にしなきゃ、人生は長くて退屈」
(「水車小屋のネネ」第三話)
これを言ったのは律が小学生のときに担任だった藤沢先生です。最初は敵なのか味方なのかちょっとわからないキツそうな先生だなと思いました(姉妹に感情移入してるとこういう気持ちになってしまいます)。
ただ、わたしは正直に言って今までこんなことを思ったことがありませんでした。わたし自身の人生が長くて退屈な人生だと言われているようでグサッと刺さりました。この世知辛い世の中で、ともすると自分が損をしないように損をしないよう立ち回ることに一生懸命になってしまいます。それが正しいことなのだと思ってしまっている自分がいます。「誰かに親切にする=自分が損をすること」という考えに支配されることこそが、人生を損していることになるのかもしれません。
この言葉は、自分はどう生きるべきか、どう人と関わっていくのかを藤沢先生に問われてるような気がします。
藤沢先生のこの言葉に対し、律はこんな風に思います。
自分はおそらく姉やあの人たちや、これまでに出会ったあらゆる人々の良心でできあがっている。
(「水車小屋のネネ」第三話)
「わたし」という人間はこれまでに出会ったあらゆる人々の良心で出来上がっている。そう、心の底から思える人はとても幸せな人です。あの人のせいで自分はこんなにツライ、自分が苦しいのはぜんぶ親が悪い、あいつさえいなければ・・・そんな風に思っている人のいかに多いことでしょう。自分もまさにその筆頭です。どうして律はこんな風に思えるのでしょうか。「足るを知る」という言葉も思い出されます。このことについて、自分はもっと考えていこうと思いました。
震災
第四話では震災が起きた2011年です。
「いつも強気で自信満々のネネ」もこのときばかりは「台の上で隣の部屋との間の仕切りにひっついて小刻みに震えて」いました。とてもいたたまれない思いになります。
中学生の時に律に助けられた研司はこう言いました。
「誰に起こってもおかしくないことなら、自分に起こったことじゃなかったのはただの偶然でしかないんだなと思いました」
(「水車小屋のネネ」第四話)
自分の身に降りかからない災害というものは、どうしても他人事になってしまいます。でも本当は自分がその時被災しなかったのはただの偶然でしかないのかと・・・この言葉にはうなずくしかありません。
律は研司が傷つき困っていたときに「できることが何もない」という言葉が頭を過ぎりながらも、その時自分ができることをしました。それは姉を筆頭に「いろんな人からよくしてもらったから」と事もなげ言います。人と人とのつながり、人との関わり方はこうありたいと強く思いました。
コロナ禍
本作は、コロナ禍真っ只中に毎日新聞夕刊にて連載されていました。作中でもエピローグではコロナ禍の姉妹とネネに関わる人々が描かれています。
ネネは、ヨウムの寿命と言われる50歳になっています。ネネはもうそばの粉挽きの監視からは引退していて、ぼーっとしてることが多くなっている。そんなネネの代わりに使われているタイマーに敵対心のようなものを抱いているのが、とてもかわいく思えます。
律が心をかけていた若者も大人になりました。
けれどもいつかは終わる。自分がいつのまにか、苦しかった十代の半ばを抜け出ていたように。
(「水車小屋のネネ」エピローグ)
律の笑顔とともに物語は終わります。
特に劇的なことは何も起こらない自分の人生も、そんなに悪いもんじゃないなと思えてきます。世の中は災害や戦争、疫病などどうにもならないことが溢れている。それでも世界はそんなにひどいところじゃない。生きる勇気が湧いてくる物語でした。
「水車小屋のネネ」はこんな人におすすめ!
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