
王谷晶さん著『ババヤガの夜』を読ませていただいた感想および読書記録です。
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書籍情報と読書記録
『ババヤガの夜』の書籍は、2020年10月23日に河出書房から単行本が1,650円(税込)で発売されました。2023年5月9日に文庫版が748円で発売されています。文庫版には電子書籍もあります。オーディオブックは2025年10月24日配信予定(Audible)です。
わたしは文庫本を2025年7月に購入し、拝読させていただきました。
著者紹介:王谷晶さん
1981年東京都生まれ。Wikipediaには以下のようにある。
王谷 晶(おうたに あきら)は、日本の小説家、エッセイスト。東京都出身。2012年、『猛獣使いと王子様』のノベライズ作品でデビュー。2021年、『ババヤガの夜』で第74回日本推理作家協会賞長編部門の最終候補に選出される。2025年、同作の英訳版”The Night of Baba Yaga”により英国推理作家協会賞(ダガー賞)の翻訳部門を日本人として初めて受賞。(Wikipedia より)
「ババヤガの夜」のあらすじ
新道依子(しんどう よりこ)は、暴力を振るうために生まれ、暴力を唯一の生きがいに生きていた。圧倒的な力に晒されることにも刺激を感じ、痛みと悔しさにすら快楽を感じていた。それは幼少期から祖父の厳しい鍛錬に耐えただけでなく、彼女には生まれながらの才能があったからだ。
ある夜、街でヤクザとのいざこざに巻き込まれたのを機に、暴力団・内樹會の組長の一人娘である内樹尚子の運転手兼護衛を命じられる。尚子は人形のように無表情でか弱いお嬢様だった。
水と油のように育った環境も考え方も全く異なる二人は、理不尽な世界で暴力と優しさ、護る側と護られる側、強さと脆さが交錯する中で予想もしなかった結末へと導かれる。
※「ババヤガ」とは、スラブ民話に登場する「妖婆、鬼婆」を意味する。
「ババヤガの夜」の感想(ネタバレあり)
バイオレンスアクション
血湧き肉躍る暴力の世界に圧倒される。
わたしは暴力的な描写はあまり好きでない。普段からそういう小説を好んで読まないし、むしろ敬遠するタイプだ。そんなわたしでも、引き込まれてしまった。小説を読んでいると映像が自然と浮かんでくる。そういう意味では映画やアニメ化向きな作品かもしれないと思ったが、あまりにも残酷グロテスクすぎて映像化できなであろうシーンも多々あったので、映像化は難しいかもしれない。しかし「ババヤガの夜」のバイオレンスアクションを映像でも観てみたいという思いは多くの人が感じるのではないだろうか。
全く関係ないのですが、女性の暴力描写ってあんまり読んだことないのですが、わたしの数少ない履歴では「狼のレクイエム」の虎四を思い出しました。残忍性では虎四の方が上か。
新道依子は新たなヒーロー像だ。
ヤクザもんから「ひでえブスだな」と罵られます。黙って立っていても滲み出る暴力の匂いがする女性。ヤクザに囲まれても怯むどころかぞくぞくしてしまう、痛みや悔しさすら刺激に感じてしまう性分。闘わなければならない理由もないのに、闘いを求める。どんな苦境に陥っても自らの力で、暴力で道を切り開く。自ら「化け物だよ」と自覚する。
これは新たなヒーロー像だと思いました。
ラベリングできない関係
依子と尚子は、育った環境も考え方も全く異なりまさに水と油だった。そんな二人が少しずつ相手に興味を持ち始め関係を築き、やがて運命をともにするような深いつながりが生まれていきます。この二人の関係性の変化の過程が、本作品の大きな魅力の1つです。「ババヤガの夜」がシスターフッド小説と言われる所以でもあり、作者自身はこの二人を「ラベリングできない関係」とおっしゃっています。
人間という生き物はラベリングできないものを排除しようとする性質を持っていると思います。なぜなら「ラベリングできない」=「理解できない」を意味するからです。自分の理解の範疇の外にあるものを目にしたときに、人は不安を感じます。その不安な状態から脱するために「異常な人」「頭のおかしい人」「キ●ガイ」などとラベリングされてしまいます。それは理解しようという行為ではなく、理解できないものとして分類し、排除する行為です。世の中の安定、安全のためにラベリングできない曖昧なものは排除されていくのです。
ダガー賞授賞式のスピーチにて作者はこうおっしゃいました。「自分の曖昧さを受け入れ、他人の曖昧さを認めることが世の中をよりよくすると信じています。」
なぜ依子はこれほどまでに暴力の権化なのだろうか?それは「曖昧なものを排除する世界をぶっ壊すための力」なのではないだろうかと思い至りました。
ハードボイルドシスターランド
「ババヤガの夜」とはどんな作品か?
まとめると、暴力の権化のような女性と人形のようにか弱いお嬢様という正反対の女性二人が出会い「ラベリングできない関係」を築き上げていく、痛快ハードボイルドシスターランドな小説でした。
まとめ
「ババヤガの夜」は、強い女性が活躍する小説が好きな人、やくざの抗争や暴力描写で血湧き肉躍る人、ハードボイルド小説が好きな人、シスターフッドに関心がある人などにおすすめです。
暴力の権化のような女性と人形のようにか弱いお嬢様という正反対の女性二人が出会い、「ラベリングできない関係」を築き上げていく、痛快ハードボイルドシスターランドな小説でした。
オーディブルでも2025年10月24日配信予定です。
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